部下の様子がいつもと違う。でも、どう声をかければいいのか分からない。管理職になって最初にぶつかる壁として、こうした悩みを挙げる人は少なくありません。職場のメンタルヘルスを「気合い」や「雰囲気」ではなく、知識として整理できるのがメンタルヘルス・マネジメント検定です。
2026年度は11月1日の第41回に続き、2027年3月21日に第42回が予定されています。ただ、3月の回で受けられるのはⅡ種とⅢ種だけ。どのコースを選ぶかで、勉強時間は10時間台から100時間超まで大きく変わります。
この記事でわかること:
- Ⅰ種・Ⅱ種・Ⅲ種の違いと、自分に合うコースの選び方
- 直近3回の合格率と、回ごとに数字がぶれる理由
- 第42回(2027年3月21日)から逆算した独学スケジュール
- 公式テキスト第6版を中心にした教材の揃え方
メンタルヘルス・マネジメント検定の3コースと受験料
主催は大阪商工会議所と施行商工会議所で、働く人の心の不調を未然に防ぐための知識を問う公的性格の強い検定です。対象者と出題の切り口がコースごとにはっきり分かれています。
| コース | 主な対象 | 試験時間・形式 | 合格基準 | 受験料(税込) |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰ種 マスターコース | 人事労務担当・産業保健スタッフ・経営層 | 選択問題2時間+論述問題1時間 | 150点満点で105点以上、かつ論述25点以上 | 11,550円 |
| Ⅱ種 ラインケアコース | 管理職・チームリーダー | 選択問題 2時間 | 100点満点で70点以上 | 7,480円 |
| Ⅲ種 セルフケアコース | 一般社員・新社会人 | 選択問題 2時間 | 100点満点で70点以上 | 5,280円 |
受験資格の制限はなく、いきなりⅠ種から受けることもできます。ただし論述がある分、Ⅰ種だけは別格の難しさです。
2026〜2027年度の試験日程
- 第41回: 2026年11月1日(日)Ⅰ種・Ⅱ種・Ⅲ種を実施。成績はWebで12月4日から照会可能
- 第42回: 2027年3月21日(日)Ⅱ種・Ⅲ種のみ実施
- 第42回の申込期間: 個人は2027年1月22日〜2月4日、団体は1月5日〜15日
Ⅰ種は年1回、秋の回しかありません。Ⅰ種を目指す人は、次のチャンスが2027年秋になる点を計画に入れておくと迷いが減ります。
Ⅱ種とⅢ種、どっちを受けるべきかの判断基準

迷いやすいのがⅡ種とⅢ種の選択です。中身の違いは「自分を守る知識」か「チームを守る知識」か、という一点に集約されます。
Ⅲ種が向いている人
Ⅲ種のテーマはセルフケア、つまり自分自身のストレスへの気づきと対処です。ストレスと上手に付き合うスキルを、基礎から体系的に学べます。ストレスの仕組み、睡眠や運動との関係、相談先の使い方などが中心になります。入社数年目の会社員や、資格の勉強に慣れていない人の最初の1つとして選ばれることが多いコースです。
Ⅱ種が向いている人
Ⅱ種は部下を持つ立場の人向けで、部下の不調サインの見つけ方、話の聴き方、休職から復職までの流れ、安全配慮義務といった法律面まで範囲が広がるのが特徴です。管理職研修の一環として会社から受験を求められるケースもあり、受験者数が最も多いのはこのⅡ種とされています。
Ⅱ種とⅢ種は同じ日に併願できる
Ⅱ種とⅢ種は午前と午後に分かれているため、同日に両方を受験できます。出題範囲の重なりが大きいので、Ⅱ種の勉強をしておけばⅢ種は追加で数時間の確認で間に合うことがほとんど。受験料は合計12,760円になりますが、1回の勉強で2つの合格を狙えるのは効率の良い選択肢でしょう。
直近3回の合格率と勉強時間の目安

合格率はコース別に見ると次のとおりです。
| 回(実施月) | Ⅰ種 | Ⅱ種 | Ⅲ種 |
|---|---|---|---|
| 第38回(2025年3月) | 実施なし | 54.8% | 77.8% |
| 第39回(2025年11月) | 19.4% | 47.8% | 65.1% |
| 第40回(2026年3月) | 実施なし | 78.0% | 69.7% |
Ⅱ種は47.8%から78.0%まで、わずか3回のあいだに30ポイント以上動いています。選択問題だけの試験は、細かい数字や法令の出題が増えた回に一気に難しくなる傾向があるためです。「前回は8割近く受かったから楽勝」と考えず、70点を安定して超える準備をしておくのが安全策と言えます。
コース別の勉強時間
| コース | 勉強時間の目安 | 学習期間の例 |
|---|---|---|
| Ⅲ種 | 10〜20時間 | 平日30分で約1カ月 |
| Ⅱ種 | 30〜50時間 | 平日1時間+週末2時間で約6週間 |
| Ⅰ種 | 100〜120時間 | 4〜6カ月(論述対策込み) |
心理学や労務の予備知識がある人はもっと短く済みます。反対に、法律用語に慣れていない場合はⅡ種で50時間を超えることも珍しくありません。
第42回に向けた8週間の独学スケジュール(Ⅱ種)

2027年3月21日の試験から逆算すると、1月下旬にスタートすれば8週間を確保できます。申込期間(1月22日〜2月4日)とちょうど重なるので、申込をした週を「1週目」にすると忘れにくくなります。
- 1〜2週目: 公式テキストを通読。最初は分からない用語に付箋を貼るだけで進める
- 3〜4週目: 2周目を精読。ストレスチェック制度、休職・復職支援の5つのステップ、安全配慮義務の判例を重点的に
- 5〜6週目: 過去問題集を1周。正答率60%を切った章だけテキストに戻る
- 7週目: 過去問2周目。数字(法令の人数要件、統計の割合)を一覧表に書き出す
- 8週目: 時間を計って本番形式で1回分。2時間のうち余裕を残して解き終えられるか確認
実際に受けた人の声で多いのは「テキストの本文より、コラムや図表の数字が出た」というもの。2周目以降は図表とその注記まで目を通しておくと取りこぼしが減ります。
11月1日の第41回を受ける人へ
試験は目前です。受験票、写真付きの本人確認書類、HBの鉛筆かシャープペンシル、消しゴム、時計の5点を前日の夜にまとめておきましょう。試験当日は自分の解答を問題用紙に控えておくと、後日発表される解答で自己採点ができます。
独学に使う教材と、講座を使うかどうかの分かれ目
出題の土台は公式テキストです。第41回・第42回はどちらも第6版が基準になっています。
公式テキスト Ⅱ種ラインケアコース 第6版
中央経済社発行、税込3,630円。Ⅱ種の受験者は、まずこの1冊が必須です。分量は多めですが、章ごとの要点まとめがあり、2周目以降は要点ページだけ拾い読みする使い方もできます。
公式テキスト Ⅲ種セルフケアコース 第6版
税込2,420円。Ⅲ種単独で受ける人はこちら。Ⅱ種と併願する人はⅡ種のテキストで大部分を補えるため、必須ではありません。
年度版の公式過去問題集
同じ中央経済社から年度版の過去問題集が出ています。選択問題は過去問と似た論点が繰り返し問われるため、テキストと過去問の2冊体制が独学の基本形です。
サクッとわかる!メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種・Ⅲ種テキスト&問題集
ナツメ社の市販書で、図解が多く、公式テキストの分厚さに挫折しそうな人の入門用として使われています。最初にこれで全体像をつかみ、公式テキストで細部を詰める順番もおすすめです。
独学と通信講座の比較
| 比較項目 | 独学 | 通信講座・オンライン講座 |
|---|---|---|
| 費用の目安 | テキスト+過去問で約6,000〜7,000円 | 教材込みで1万円前後〜数万円 |
| 向いている人 | 文章を読むのが苦にならない人 | 動画で要点だけ押さえたい人 |
| スケジュール管理 | 自分で組む | カリキュラムに沿って進められる |
スマホで動画を見ながら進めるオンライン講座は、通勤時間しか確保できない管理職に選ばれています。テキストを2週間開けなかったら講座に切り替える、と最初に決めておくと判断に迷いません。
合格後に職場でどう活きるか
2015年12月から従業員50人以上の事業場でストレスチェックが義務化され、さらに2025年5月に公布された改正労働安全衛生法で、50人未満の事業場にも義務が広がることになりました(公布から3年以内に施行予定とされています)。職場のメンタルヘルス対策は、中小企業でもこれから本格的に求められる分野です。
- 管理職: 部下面談や復職支援の場で、判断の根拠を持って動ける
- 人事・総務: 求人票で歓迎資格として挙げられることがあり、転職時のアピール材料になる
- 一般社員: 自分の不調に早く気づき、相談先を選べるようになる
この資格だけで年収が大きく上がるわけではありません。一方で、昇格要件や資格手当の対象に加えている企業もあるため、勤務先の制度は確認しておく価値があります。会社によっては受験料補助や合格祝い金を出す資格取得支援制度があり、従業員研修として取り組む企業は人材開発支援助成金などの公的制度を検討する余地もあります。
メンタルヘルス・マネジメント検定のよくある質問
Q1. 受験資格はありますか?
ありません。学歴・年齢・職歴に関係なく、どのコースからでも受験できます。
Q2. Ⅲ種を持っていないとⅡ種は受けられませんか?
受けられます。Ⅲ種の合格は条件になっていないため、管理職の人はⅡ種から始めるのが一般的です。
Q3. 独学だけで合格できますか?
Ⅱ種・Ⅲ種は公式テキストと過去問題集の2冊で合格する人が多い試験です。Ⅰ種は論述があるため、添削を受けられる講座を併用する人が増えます。
Q4. 資格に有効期限はありますか?
有効期限や更新制度はありません。ただし法令や統計は改定されるため、数年おきにテキストの最新版で知識を更新しておくと実務で困りません。
Q5. 試験会場は選べますか?
全国の主要都市から受験地を選べますが、具体的な会場は受験票で指定されます。申込が遅いと遠い会場になる場合もあるため、早めの申込が無難です。
Q6. 合格発表はいつですか?
第41回はWebでの成績照会が12月4日から始まります。第42回は2027年4月23日から照会できる予定です。
Q7. 産業カウンセラーや公認心理師とはどう違いますか?
産業カウンセラーや公認心理師が相談を受ける専門職のための資格であるのに対し、この検定は働く人や管理職が予防の知識を身につけるためのものです。入口として取り組みやすく、専門資格に進む前段階として受ける人もいます。
3月21日の試験に間に合わせるための最初の一歩
メンタルヘルス・マネジメント検定は、Ⅲ種なら10〜20時間、Ⅱ種でも30〜50時間ほどで合格ラインに届く、取り組みやすい検定です。次の第42回は2027年3月21日。申込は1月22日に始まります。
- 今週: Ⅱ種かⅢ種か、または併願かを決める
- 年内: 公式テキスト第6版を手に入れ、第1章だけ読んでおく
- 1月22日以降: 申込を済ませ、8週間スケジュールをスタート
部下に声をかける前に、まず自分の知識を整える。その準備は、テキストを1冊開くところから始まります。
