IT系資格の入門として必ず名前が挙がるのが「ITパスポート」と「基本情報技術者試験」です。どちらもIPA(情報処理推進機構)が実施する国家資格ですが、対象者・難易度・キャリアへのインパクトは大きく異なります。
「とりあえずITパスポートから?」「いきなり基本情報でも大丈夫?」——この判断を間違えると、数ヶ月の学習時間がもったいない結果になることもあります。2026年最新の試験制度をもとに、両試験を7つの軸で徹底比較しました。
- 試験の位置づけ・対象者の違い
- 難易度と合格率の比較(2026年実績)
- 必要な勉強時間と学習コスト
- キャリア・年収へのインパクト
- 2026〜2027年の制度変更で押さえるべきポイント
試験の基本情報と対象者の違い
ITパスポート(略称:iパス)はIPAのスキルレベル1に分類される「ITを利活用するすべての社会人・学生」向けの試験です。経営戦略・マネジメント・テクノロジの3分野から幅広く出題され、IT部門以外の営業職や事務職からの受験者も少なくありません。
一方、基本情報技術者試験(略称:FE)はスキルレベル2で、「ITエンジニアの登竜門」と位置づけられています。プログラミング・アルゴリズム・データベース設計など、システムを「作る側」の知識が求められます。
| 比較軸 | ITパスポート | 基本情報技術者 |
|---|---|---|
| スキルレベル | レベル1 | レベル2 |
| 対象者 | 全社会人・学生 | ITエンジニア志望者 |
| 試験方式 | CBT(通年) | CBT(通年) |
| 試験時間 | 120分 | 科目A 90分+科目B 100分 |
| 問題数 | 100問(四肢択一) | 科目A 60問+科目B 20問 |
| 受験料 | 7,500円 | 7,500円 |
| 合格基準 | 総合600/1000点+各分野300/1000点 | 科目A・B各600/1000点 |
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どちらもCBT方式で通年受験が可能です。テストセンターに空きがあれば、申込から最短3日後に受験できる手軽さがあります。受験料は同額の7,500円なので、費用面での差はありません。
合格率と難易度を数字で比較
2025年度の実績で見ると、ITパスポートの合格率は約50〜55%です。受験者の半数以上が合格しており、IT未経験者でもきちんと対策すれば十分に到達できるレベルです。
基本情報技術者試験は2023年4月のCBT化以降、合格率が上昇傾向にあります。2025年度は約45〜50%で推移しています。以前の筆記試験時代(合格率20〜30%)と比較すると大幅に上がっていますが、これは「準備が整った段階で自分のタイミングで受験できる」CBTの特性によるものです。試験の本質的な難易度が下がったわけではありません。
| 指標 | ITパスポート | 基本情報技術者 |
|---|---|---|
| 合格率(2025年度) | 約50〜55% | 約45〜50% |
| 必要勉強時間(未経験) | 100〜150時間 | 200〜350時間 |
| 必要勉強時間(IT経験者) | 50〜80時間 | 100〜150時間 |
| 独学の難度 | 低い(市販テキスト1冊で可) | 中程度(科目Bで躓く人多数) |
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独学の難易度で言えば、ITパスポートは暗記中心で「テキスト1冊+過去問」で合格できます。基本情報は科目B(旧・午後試験)でアルゴリズムの擬似コード読解やセキュリティの実践的思考が求められるため、プログラミング未経験者にはハードルが高めです。
勉強時間・おすすめ教材・学習コスト

ITパスポートの学習プラン
IT未経験者の場合、1日1時間×3ヶ月(約100時間)で合格圏に入ります。おすすめテキストは『いちばんやさしいITパスポート 絶対合格の教科書』(SBクリエイティブ・税込1,738円)です。フルカラーで図解が豊富なため、IT用語に馴染みがない方でも挫折しにくい構成です。
過去問は公式サイトで無料公開されており、「ITパスポート試験ドットコム」(無料Webサービス)で1,000問以上の過去問をスマホから解けます。教材費は1,500〜2,000円程度で収まるため、コスパの面では非常に優秀でしょう。
基本情報技術者の学習プラン
未経験者の場合、1日1.5時間×5〜6ヶ月(約250時間)が目安となっています。科目Aはテキスト学習と過去問で対応できますが、科目Bはアルゴリズムの擬似コードを読み解く練習が別途必要です。
テキストは『キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者 2026年版』(技術評論社・税込2,178円)が定番です。イラスト主体で概念を掴みやすく、初学者のファーストチョイスとして長年支持されています。
科目B対策には『基本情報技術者 科目Bの重点対策』(ITEC・税込2,640円)を追加すると、擬似コードの読解パターンを体系的に学べます。
オンライン講座を活用する場合はスタディング(基本情報コース・税込36,800円)が人気です。スマホ完結で学習でき、科目A免除制度にも対応しています。科目A免除を使えば本試験では科目Bのみに集中できるため、合格率が上がります。
キャリア・年収へのインパクト

資格を取ったら実際にどの程度キャリアに役立つのか——ここが最も気になるポイントでしょう。
ITパスポートの評価
ITパスポートは「ITリテラシーの証明」として広く認知されています。2026年時点で累計応募者数は300万人を超えており、就活のES(エントリーシート)に書ける資格としてメジャーです。たですし、IT業界内での評価は限定的で、「最低限の知識はある」という確認にとどまります。
年収面でのインパクトは小さく、資格手当を設けている企業でも月額3,000〜5,000円程度が相場です。
基本情報技術者の評価
基本情報技術者はIT企業での評価が高く、新卒・第二新卒の転職活動では「ITの基礎を体系的に学んだ証明」として有効です。SIer(システムインテグレーター)や社内SEへの転職で書類通過率が上がるとの報告が目立ちます。
資格手当は月額5,000〜20,000円が一般的で、大手SIerでは一時金10〜30万円を支給する企業も。年収ベースで見ると、基本情報取得者の平均年収は約400〜500万円(20代後半〜30代前半、IT職種)とされる水準でしょう。
2026〜2027年の制度変更ポイント

2026〜2027年にかけて、情報処理技術者試験制度に大きな変更が予定されている点に注意が必要です。受験を検討している方は以下のスケジュールを確認しておきましょう。
- 2026年12月28日以降: 基本情報技術者試験のCBT一時休止が予定されています(再開は2027年春頃の見込み)
- 2027年度: 新試験制度への移行が予定されていますが、基本情報技術者試験は試験区分として継続されます
- 出題範囲の見直し: AI・データサイエンス関連の比重が増える可能性が示唆されています
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ITパスポートについては現時点で大きな変更は発表されていません。たですし、2026年度からシラバス(出題範囲)のバージョン6.3が適用され、生成AI関連の出題が増える見込みです。
制度変更前に取得しておきたい方は、2026年11月頃までの受験を目指すのが安全です。
教育訓練給付金で学習コストを抑える
基本情報技術者の対策講座は厚生労働省の教育訓練給付制度の対象になっているケースが多くあります。スタディングやTAC、大原の基本情報コースは一般教育訓練給付金の対象講座に指定されており、受講料の20%(上限10万円)がハローワーク経由で返金される仕組み。雇用保険に1年以上加入していれば利用可能なため、社会人の方はぜひ活用を検討してください。
よくある質問
Q. IT完全未経験ですが、いきなり基本情報に挑戦しても大丈夫ですか?
学習に5〜6ヶ月以上かけられる方であれば可能です。ただし科目Bのアルゴリズムで挫折するケースが多いため、プログラミング経験ゼロの場合はITパスポートで基礎固め→基本情報と段階的に進める方が効率的でしょう。
Q. 両方取るなら、どちらを先に取るべきですか?
ITパスポート→基本情報の順番が一般的です。ITパスポートの学習内容は基本情報の科目Aと約3割重複するため、学習の積み上げとして無駄がありません。
Q. 文系出身でも基本情報に合格できますか?
合格者の約4割が文系出身というデータがあります。科目Aは暗記中心で文系有利な面もあり、科目Bも「論理的に考える力」があれば理系知識は必須ではありません。
Q. ITパスポートだけで転職に有利になりますか?
IT業界以外(事務・営業・企画職)への転職では「ITリテラシーがある」証明として一定の評価を受けます。IT業界へのキャリアチェンジを目指す場合は、基本情報まで取得するのがおすすめです。
Q. 受験日の変更やキャンセルはできますか?
どちらもCBT方式のため、試験日の3日前まで変更が可能です(Prometric/CBT-Solutionsの規定による)。急な予定変更にも対応しやすい仕組みです。
Q. 科目A免除制度とは何ですか?
IPA認定の講座(スタディング、TAC等)を修了すると、本試験で科目Aが免除され科目Bのみの受験となります。免除の有効期間は修了から1年間で、科目Bに集中できるため合格率が上がるメリットがあります。
自分に合った資格を選んで学習を始めよう
まとめると、ITパスポートは「ITの基礎教養を短期間で証明したい」方向け、基本情報技術者は「IT業界でエンジニアとして働く意思がある」方向けです。迷った場合の判断基準を整理しました。
- 学習に使える時間が3ヶ月以内 → ITパスポート
- プログラミング経験がゼロ → ITパスポートから段階的に
- IT企業への就職・転職が目標 → 基本情報技術者(時間があれば直接)
- 現職(非IT)でのスキルアップ → ITパスポート
- 資格手当・年収アップが最優先 → 基本情報技術者
どちらも受験料7,500円、CBTで通年受験可能と、チャレンジのハードルは低い資格です。まずはテキスト1冊を手に取り、最初の1週間で「続けられそうか」を確かめることが合格への第一歩となります。
