10月19日の時点で、第174回日商簿記1級の本番(2026年11月15日・日曜)までは残り27日です。商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目すべてに手を広げたまま、どこから仕上げればよいか迷っている受験生は少なくありません。1級は「合計70点以上」に加えて「各科目40%以上」という足切りがあるため、得意科目を伸ばすだけでは合格できない試験です。
直近8回の公式データと試験の仕組みから逆算し、残り4週間で何をどの順番でやるかを具体的に整理しました。
- 第174回の試験概要(受験料・試験時間・合格基準)
- 合格率の推移と、第173回の21.2%をどう読むか
- 直前4週間の週別スケジュール
- 足切りを避けるための科目別の優先順位
- 本番90分×2の時間配分と当日の注意点
- 直前期に絞って使う教材と電卓
第174回日商簿記1級の試験概要と「残り27日」の位置づけ
1級は2級・3級と違ってネット試験がなく、年2回(6月・11月)の統一試験のみです。2027年2月の第175回は2級・3級だけの実施のため、11月を逃すと次の1級は2027年6月まで約7か月の空白期間ができる計算です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験日 | 2026年11月15日(日)9:00開始 |
| 受験料 | 8,800円(税込) |
| 試験時間 | 商業簿記・会計学 90分 / 工業簿記・原価計算 90分 |
| 配点 | 4科目 各25点・合計100点 |
| 合格基準 | 合計70点以上、かつ1科目ごとの得点が40%(10点)以上 |
| 申込 | 各商工会議所ごとに受付(東京商工会議所は9月29日〜10月6日で締切済み) |
申込期間は商工会議所によって異なり、東京23区の受付はすでに終了しました。申込状況の確認方法は日商簿記 第174回 申込締切2026にまとめています。
残り27日は、新しい論点を覚える期間ではなく「解ける論点を本番形式で確実に取る」ための期間です。この切り替えが遅れるほど、総合問題を時間内に解く練習が足りなくなります。
合格率の推移:第173回の21.2%は例外と考えたほうが安全です

日本商工会議所が公表している受験者データでは、直近8回の合格率は次のように推移しています。
| 回 | 試験日 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 第173回 | 2026年6月14日 | 9,806名 | 2,076名 | 21.2% |
| 第171回 | 2025年11月16日 | 10,524名 | 1,604名 | 15.2% |
| 第170回 | 2025年6月8日 | 9,610名 | 1,343名 | 14.0% |
| 第168回 | 2024年11月17日 | 10,420名 | 1,572名 | 15.1% |
| 第167回 | 2024年6月9日 | 9,457名 | 992名 | 10.5% |
| 第165回 | 2023年11月19日 | 10,251名 | 1,722名 | 16.8% |
| 第164回 | 2023年6月11日 | 9,295名 | 1,164名 | 12.5% |
| 第162回 | 2022年11月20日 | 9,828名 | 1,027名 | 10.4% |
8回のうち7回は10〜17%の範囲に収まっており、20%を超えたのは第173回だけです。受験生の間では「問題は難しく感じたのに合格率は高かった」という声も多く、難易度の体感と合格率が一致しないことは珍しくありません。
実は、11月試験の実受験者数は直近3回とも1万人を超えており、同じ年度の6月より約900〜1,000名多い傾向があります。年内に結果を出したい社会人や学生の受験が重なっている可能性があります。11月は「15%前後」を前提に、合格ラインぎりぎりではなく75点を目標に置くのが現実的です。
直前4週間の勉強スケジュール(10月19日〜11月14日)

社会人の場合、平日2時間・休日5時間を確保できると4週間で約80時間になります。次の表は、その80時間を「弱点の穴埋め → 総合問題 → 本番形式 → 調整」の順に配分した例です。
| 期間 | テーマ | 具体的にやること |
|---|---|---|
| 第1週(10/19〜10/25) | 足切り科目の穴埋め | 過去問1回分を時間を計って解き、10点を割った科目の頻出論点を集中して復習 |
| 第2週(10/26〜11/1) | 総合問題の型づくり | 連結会計・本支店会計・原価計算の総合問題を各3題、解く順番を固定する |
| 第3週(11/2〜11/8) | 本番形式の予想問題 | 予想問題を4回分、9:00開始の時間割で通し演習(日曜は本番と同じ時刻に) |
| 第4週(11/9〜11/14) | 調整・暗記の総点検 | 間違いノートと理論(会計学の文章問題)の見直し、新しい問題には手を出さない |
実際に過去問を時間を計って解いてみると、自宅学習では気づかなかった「解く順番の迷い」で10分以上失うことがよくわかります。第3週の日曜(11月8日)は、本番のちょうど1週間前です。この日に9:00開始・前半90分・休憩・後半90分の時間割で通し演習をしておくと、当日の集中力の配分がつかみやすくなります。
手応えは、2級までの学習をどう進めてきたかでも変わるでしょう。2級の範囲に不安が残る場合は、簿記2級 独学勉強法2026で扱った工業簿記の基礎を先に確認しておくと、原価計算の取りこぼしが減ります。
足切り(40%)を避けるための科目別の優先順位

1級で多い不合格パターンは、合計70点に届いていても1科目だけ9点以下で落ちるケースです。直前期は「得意を伸ばす」より「どの科目も10点を確実に超える」ことを優先します。
商業簿記:連結会計の基本手順だけは落とさない
商業簿記は損益計算書や貸借対照表を作る総合問題が中心で、連結会計・本支店会計・企業結合が繰り返し出題されています。全部を完璧にする時間はないため、開始仕訳・のれんの償却・非支配株主持分の3手順を確実にし、部分点を積み上げる方針が安全です。
会計学:理論問題は「語句」で点を拾う
会計学は計算に加えて、正誤問題や語句補充も出題範囲です。退職給付・減損会計・税効果会計のように、計算と理論の両方で問われる論点を優先すると効率が上がります。語句問題は1問1〜2点でも、足切り回避には大きな意味があります。
工業簿記:勘定連絡図を毎回書く
工業簿記は標準原価計算・部門別計算・総合原価計算が中心です。いきなり計算を始めると数字の流れを見失いやすいため、最初の2分で勘定連絡図を書く習慣をつけると、ケアレスミスが目に見えて減ります。
原価計算:CVP分析と意思決定会計を先に
原価計算は意思決定会計・CVP分析・予算実績差異分析などが頻出です。問題文が長く、設問の後半ほど難しくなる構成が多いため、前半の設問を確実に取って10点を先に確保するのがポイントです。
本番90分×2の時間配分と当日の注意点
1級の試験は前半90分(商業簿記・会計学)と後半90分(工業簿記・原価計算)に分かれ、それぞれの時間内でどちらの科目から解いてもかまいません。前半を例にすると、次のような配分が多く使われています。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 0〜5分 | 全問題をざっと見て、会計学の理論問題の量と商業簿記の総合問題の重さを確認 |
| 5〜30分 | 会計学の理論・小問(短時間で点になる部分) |
| 30〜80分 | 商業簿記の総合問題(解ける項目から埋める) |
| 80〜90分 | 空欄の見直し、会計学の計算問題の残り |
過去の受験者の失敗談で目立つのは「商業簿記の連結に40分かけて、会計学が手つかずのまま終わった」というものです。1問に時間をかけすぎたと感じたら、10分で見切って次の科目へ移るルールを事前に決めておくと立て直しやすくなります。
電卓は計算機能のみのものであれば複数台の持ち込みが認められており、故障や電池切れに備えて2台用意する受験生が多いようです。試験会場は暖房が効きすぎることも寒いこともあるため、脱ぎ着しやすい服装で、受験票・写真付き身分証明書・筆記用具をそろえておきます。
直前期に絞って使う教材と電卓
残り4週間で新しいテキストを1冊通読する時間はありません。教材は「過去問・予想問題・手元のテキスト」の3種類に絞り、手を広げないことが大切です。
TAC出版 合格するための過去問題集 日商簿記1級
出題実績のある過去問を論点別に確認できる問題集です。合格するための過去問題集 日商簿記1級は解説が詳しく、第1週の弱点洗い出しに向いています。毎年度版が出ているため、購入するなら最新年度版が安心です。
TAC出版 網羅型完全予想問題集 日商簿記1級
本番と同じ形式の予想問題を複数回分収録しています。網羅型完全予想問題集 日商簿記1級は第3週の通し演習に使いやすく、出題されやすい論点を広く確認できます。
TAC出版 スッキリわかる日商簿記1級 商業簿記・会計学
すでに手元にあるテキストが別の出版社のものなら、無理に買い替える必要はありません。辞書代わりに使う場合、スッキリわかる日商簿記1級はイラスト付きで論点の全体像をすばやく確認できます。
独学で不安なら直前対策講座も選択肢
独学で総合問題の解き方が固まらない場合は、TACや大原などが開講している1級の直前対策講座・答練コースを比較してみるのも一つの方法です。カリキュラムは予想問題の演習と解説講義が中心で、Web受講なら仕事帰りでも視聴できます。1級の通学・通信講座には厚生労働省の一般教育訓練給付金の対象になっているコースもあり、条件を満たせば受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。対象かどうかは講座の案内とハローワークで確認してください。
12桁の簿記向け電卓
1級は計算量が多いため、早打ちに対応した12桁の電卓が基本です。カシオ JS-20WKやシャープ EL-G37のような実務向けモデルは、キーの打ち間違いが少なく長時間でも疲れにくいと言われています。2台目は同じ配列のものにしておくと、故障時にも戸惑いません。
日商簿記1級の直前期によくある質問
Q1. 残り1か月から勉強を始めても合格できますか?
2級合格直後で基礎がある人でも、1級の範囲は広いため1か月からの合格はかなり難しいと考えられます。11月の試験は本番形式に慣れる場と位置づけ、2027年6月の受験を本命にする判断も現実的です。
Q2. 合格基準の「各科目40%」とは具体的に何点ですか?
1科目25点満点のため、10点以上が必要です。合計が70点以上でも、1科目が9点以下なら不合格になります。
Q3. 1級にネット試験(CBT)はありますか?
ありません。1級は年2回の統一試験(紙の試験)のみで、2級・3級のネット試験とは仕組みが異なります。
Q4. 11月を逃した場合、次の1級はいつですか?
2027年2月の第175回は1級を実施しないため、次は2027年6月の試験になる予定です。日程は日本商工会議所の発表を確認してください。
Q5. 合格すると何に役立ちますか?
経理・財務の専門スキルを示す資格として評価が高く、税理士試験の税法科目の受験資格も得られます。経理職の求人では簿記2級以上を条件にする企業が多いため、1級は転職時に一段上の専門性を示す材料として有効です。年収への影響は企業や職種によって差がありますが、資格手当として毎月数千円〜数万円を支給する企業もあります。
Q6. 電卓は何台持ち込めますか?
四則演算やメモリ機能など計算機能のみの電卓であれば、予備を含めて複数台持ち込めます。関数電卓・印刷機能・音の出る機能が付いたものは使えないため、受験地の商工会議所の案内で事前に確認してください。
11月15日を「最後の1級受験」にするために
残り27日でやるべきことは、足切り科目をなくし、本番と同じ時間割で解く練習を重ねることです。まずは今週中に過去問を1回分、時間を計って解き、10点を割った科目を書き出してください。そこが第1週の学習テーマです。
手持ちの教材に予想問題がない場合は、早めに1冊だけ追加しておくと第3週の通し演習に間に合います。簿記の学習全体の流れを振り返りたい場合は、簿記3級と2級の違い2026もあわせて確認すると、1級で求められる力との差がつかみやすくなります。



































